ブックデザインで使用する単位について簡単にまとめておきます。本のデザインの作業では、用紙の寸法、文字の大きさ、位置の指定など様々なところで長さの単位を用います。レイアウトソフトの Indesign では、聞いたことのないような単位もずらっとたくさん使えるようになっていますが、日本の書籍の制作で実際に使用するような単位はこのうちのいくつかだけと思います。私自身は基本的には慣れ親しんだ長さの単位 mm とそれにもとづいた文字サイズの単位系(級・歯)を使うことがほとんどです。ごくまれにどうしても必要な場合に文字サイズにポイントを使ったこともありますが、「どうしても」といった事情があったことは今まででも 1-2 度くらいしかありません。このあとに、あらためて調べたことなど長々書きますが、先に要点だけ抜き出します。
- メートルは国際単位系の長さの単位
- 用紙のサイズや位置指定にはミリメートルを使用する。
- ミリメートルは 1/1000 メートル。
- 級は文字サイズに、歯は行送り字送りなど間隔や移動量に用いる。
- 1級(1歯)は0.25(1/4)ミリメートル。 国際単位系と親和性
- 国際ヤードでは 1 インチ=25.4mm
- DTP ポイント= 1/72インチ
- 初期 DTP では 1ポイント=1ピクセル= 1/72インチ
- ピクセルは画像を構成する最小単位・小さな点
- 画像解像度ピクセル/インチは 1 インチあたりのピクセル数
- 一般的な印刷物使用では画像解像度が300-350 ピクセル/インチ必要といわれる
単位間の相互関係
- 1m=100cm=1000mm=1000000μm
- 1級(歯)=0.25mm
- 1 インチ=25.4mm
- 1 ポイント=1/72インチ(DTP)
- 350ピクセル(350ピクセル/インチ)=1 インチ
- 72ピクセル(72ピクセル/インチ)=1 インチ
簡単な単位変換のページを作ってみました。よかったら使ってください。
国際単位系とそれに基づく単位
長さの単位・ミリメートル
国際単位系は、メートル法をもとに整理された単位系で、日本を含めてほとんどの国で使用されています。長さの単位はメートル(m)で、 「1 秒の 299 792 458 分の 1 の時間に光が真空中を伝わる行程の長さである」と定義されています。 10の累乗倍を表す接頭辞を用いて、センチメートル(cm)は 1/100 メートル、ミリメートル(mm)は 1/1000 メートル、マイクロメートル(μm)は 1/1000000 メートル (= 1/1000mm)。
日常だとセンチメートルやメートルの方が出番が多いかもしれませんが、書籍のサイズ感ではおもにミリメートルを使用して用紙のサイズや位置の指定を表します。 日本のブックデザインの範囲では、長さの単位はほぼミリメートル一択でいいと思います。用紙サイズの規格もメートル法で規定されているので合理的です。経験上も文字サイズでポイントを使ったことならわずかながらありますが、長さにインチを使った経験はありません。 用紙の厚みは、小数点3桁までのミリメートルまたはマイクロメートルで表せますが、重さの単位のキログラムやグラムを使って1000枚の重さや1平方メートルの重さで、紙の厚さの目安とすることが多いです。(このことは後日別の記事で用紙の基礎知識としてまとめたいと思います)
文字の単位・級(Q)/歯 (H)
日本の写植で利用するように作られた単位で、1級(1歯)は0.25(1/4)ミリメートルと、ミリメートルを基準に定義されています。長さの単位にミリメートル・文字の単位に級・歯を利用すれば一貫した単位系で作業ができます。 級と歯は同じ大きさを表しますが、文字のサイズには級、行送りや字送りといった間隔や移動量を表すには歯を用います。
ヤードポンド法とそれに基づく単位
上記のようにほとんどの国では国際単位系が使用していますが、アメリカといくつかの国ではヤードポンド法が使用されています。DTP はアメリカを中心に発祥・発展してきたので、 ヤードポンド法に由来する部分があります。
長さの単位・インチ
ヤードポンド法の長さの単位・インチは、時代や地域によってちょっとずつ違う定義があったようですが、国際ヤードで 1 インチ=25.4mmと定義したそうです。日本のDTPでは、直接長さの単位としてインチを使うことはないと思われますが、後述のポイントやピクセル/インチがインチを使って定義されています。
文字の単位・ポイント
欧米の活字サイズの単位であるポイントは、アメリカ式とヨーロッパ式で微妙に異なるサイズでしたが、DTP では、そのどちらとも微妙に異なる定義をしました。DTP ポイントあるいは Postscript ポイントといい、1ポイント=1/72インチと定義します。初期の DTP において、当時の Mac のモニタの解像度(72dpi)にあわせて、1ポイント=1ピクセル= 1/72インチと定義することによって、画面の表示と印刷結果を一致させる(WYSIWYG)を実現したことに由来します。
デジタル画像の構成単位・ピクセル
ピクセルはデジタル画像を構成する最小単位。画像は色情報を持つ小さな点の集まりとして表現されますが、その小さな点の 1 粒が 1 ピクセルです。ピクセルはミリメートルやインチのような物理的なサイズの単位ではありません。24インチのフル HD モニターと 4K モニターがあったとして、同じピクセル数の画像を等倍表示(データの 1 ピクセルとモニタの 1 ドットを一対一対応で表示する)した場合、 4K モニターの方が高精細な分表示サイズは小さくなります。DTP アプリケーションでは、画像解像度を設定することで、画像と出力時の物理的なサイズが対応づけされます。
画像解像度の単位・ピクセル/インチ
ピクセル/インチは、密度の単位で、その名の通り、1インチあたりのピクセル数です。幅350ピクセルの画像を350ピクセル/インチで出力すると出力結果は幅1インチになります。Indesign や Illustrator といった DTP のアプリケーションでは、ビットマップ画像を配置するときに画像の解像度設定に応じたサイズ(幅350ピクセル・解像度350ピクセル/インチの画像は幅 1 インチで)で配置します。解像度に依存しないベクトル画像の場合(svg を Illustrator で開くときなど)は、 1ポイント=1ピクセル= 1/72インチの DTP の定義に(たぶん)従い72
ピクセル/インチで換算したサイズになるようです。
一般的な印刷物に使用する場合、カラーやグレースケールの画像は、300-350ピクセル/インチ程度の解像度が必要と言われています。画像は高解像度であるほどきめ細かくなりますが、必要以上に高解像度でも印刷では再現できなかったりデータが重くて処理に時間がかかるだけになって意味がないこともあります。また、画像の状態や使用目的によっては、300ピクセル/インチに満たなくても使用する場合もあります。